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マスト細胞とは

免疫担当細胞は骨髄幹細胞を起源とし、骨髄系幹細胞あるいはリンパ球系幹細胞を経て分化する。前者から好中球、単球、好酸球、マスト細胞など主に自然免疫に関与する細胞が、後者からはT細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞など主に獲得免疫に関与する細胞が分化する。マスト細胞は、前駆細胞のまま骨髄から組織内に遊走し、最終定着組織で成熟、活性化し、様々な炎症性メディエーターを産生、脱顆粒により放出し、自然免疫応答を担う。トリプターゼ、キマーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼなどのマスト細胞が産生する酵素は、侵入した抗原を処理すると同時に、組織のリモデリングや線維化を引き起こす。ヒスタミン、ヘパリン、プロスタグランディン、セロトニンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーターは、血管透過性を介して炎症の場を提供するとともに、組織浮腫を引き起こす。この現象は、強皮症の浮腫期早期にみられる手指の掻痒を伴う腫脹に一致する。また、VEGF、トリプターゼは血管新生を誘導し、IL-8、MIP-1やMCP-1などのケモカインは、好中球、T細胞、単球などの免疫担当細胞の血管外遊出を介して炎症部位への集積を齎す。TNF-a、IL-1、IL-6などの炎症性サイトカインを産生し、炎症病態の増強や遷延化を引き起こす。すなわち、マスト細胞は、アレルギー反応のみならず、自然免疫を中心とした多様な炎症病態の形成において重要な役割を担う細胞であると認識されるようになっている(図1)。更には、補体やサイトカインによる刺激を介して、獲得免疫への移行や自己免疫疾患の病態形成過程においても重要な役割を担うことが明らかになってきている7-9)。

図1. マスト細胞は自己免疫疾患に深く関連するさまざまな因子を産生し脱顆粒する