ヒト強皮症皮膚組織におけるマスト細胞
前述の如くモデル動物とマスト細胞の関与は数々取り出さされており、ヒトにおいても早期の強皮症皮膚組織に多数のマスト細胞が存在していることは知られている。
しかし、マスト細胞と強皮症の病期・病態への関与については詳細な検討は行われていない。そこで我々は、診断目的で施行された皮膚生検検体(強皮症 54症例、非強皮症 (膠原病疾患) 29症例)を用いて検討した。マスト細胞同定には、toluidine blue染色とc-Kit免疫染色を用い、正確な標本面積当たりのマスト細胞数(/㎟)を計測するためにNanoZoomer Digital Pathology (NDP)を使用した。NDPは、組織スライドを3分間で19億画素の高解像度デジタルスライドとして変換・記録するシステムで、デジタルスライドは、マウス操作により任意な位置を指定し、拡大・縮小して画面上で観察可能である。また、簡易操作で正確な標本面積が自動的に計測される。更に、一画面に4つのスライドを同時に表示し、シンクロして拡大・縮小可能であり、ミラーイメージで異なる染色を比較することが可能である。この方法を用いて、強皮症 54例と非強皮症 29例のマスト細胞数を比較したところ、toluidine blue染色(25.1±9.4 vs 12.9±6.9, p=0.000)とc-kit免疫染色(30.1±11.0 vs 18.0±11.9, p=0.000)のいづれにおいても強皮症症例で真皮層に有意なマスト細胞の増加を認めた。また、toluidine blueとc-kit免疫染色によるマスト細胞同定を比較検討したところ、ほぼ同等の強い正の相関を認めたため、マスト細胞同定にはいづれの手法も有用であることが判明した。廉価で簡便なtoluidine blue染色用いて以下の検討を行った。