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皮膚硬化の進行とマスト細胞の関与

強皮症 54症例の臨床的特徴を示す。平均年齢は59.8歳、男女比は女性83.3%で、non-SSc症例と有意差を認めなかった。罹病期間が平均2年、modified Rodnan’s skin thickness score (MRSS)は平均9.9点であった。病型分類別では、広汎性皮膚硬化型が48%、限局性皮膚硬化型が52%で、臓器病変に関しては、肺高血圧合併が25%、間質性肺炎合併が61.1%であった。自己抗体は、抗Scl-70抗体陽性が31.5%、抗セントロメア抗体陽性が29.4%であった。
MRSSとマスト細胞の関係について検討する目的で、MRSSを0-4点、5-12点、13-40点の3群に分け比較したところ、MRSSの増加に伴いマスト細胞の有意な増加を認めた(p=0.023)。また、皮膚生検部位skin score別にマスト細胞を比較すると有意差は認めないものの(p=0.115)、生検部位skin scoreが最も高い、3点でマスト細胞が多い傾向にあった。
次に、自己抗体とマスト細胞の関係について検討を行ったところ、抗Scl-70抗体陽性例においてマスト細胞は有意に増加していたが、一方、抗セントロメア抗体陽性症例では、有意差は認めないものの、マスト細胞が少ない傾向にあった。抗Scl-70抗体陽性例では進行性の広汎な皮膚硬化を呈することが多いため、病型分類別にマスト細胞数の比較を行った。広汎性皮膚硬化型では、限局性皮膚硬化型と比較して有意にマスト細胞数は増加していた。更に、その増加したマスト細胞からは、線維化において重要な役割を果すサイトカインであるトランスフォーミング増殖因子(Transforming growth factor;TGF)-b1と血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor;PDGF)を産生していることが免疫染色および蛍光染色により明らかとなった。MRSSの結果と併せて、マスト細胞は皮膚硬化の進展に関与していることが示唆された。