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強皮症の肺高血圧病態へのマスト細胞の関与

強皮症では多くの臓器病変を来たすことが知られているが、中でも肺高血圧の有無は予後を大きく左右する。マスト細胞の皮膚硬化への関与が示唆されたことから、肺高血圧との関与についても検討を行った。肺高血圧合併症例では非合併例と比較してマスト細胞は有意に増加していた。更に、肺高血圧の病勢との関連を心臓超音波検査による平均肺動脈圧と最大肺動脈圧圧較差で検討を行ったところ、いづれとも強い正の相関を認め、肺高血圧の病勢にもマスト細胞の関与が示唆された。肺高血圧病態への直接的関与を検討する目的で、強皮症関連肺高血圧剖検例の肺組織を用いて検討を行った。HE染色では内膜の肥厚を、Elastica van Gieson (EVG)染色で弾性線維肥厚を、そしてMasson-T染色では膠原線維の肥厚を伴う肺動脈を認め、その肺動脈周囲には多数の脱顆粒したマスト細胞が存在していた。これら肺動脈周囲のマスト細胞はTGF-b1とPDGFを産生していることが免疫染色および蛍光染色により明らかとなった。これらの結果は、皮膚硬化のみならず、強皮症における肺高血圧病態に直接マスト細胞が関与していることを示唆するものであり、今後の治療を考慮する上で重要な知見である。