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強皮症モデルマウスにおける関与

強皮症モデルマウスにおけるマスト細胞の関与は、Tskマウス、ブレオマイシン誘導モデルマウス、慢性GVHDモデルマウスで主にこれまで研究されている。Tskマウスは深部真皮と皮下結合組織線維化を含む結合組織の広範囲な障害を呈する遺伝子突然変異による系統である10), 11)。Walkerらは、Tskマウスの線維化病変は真皮での盛んに脱顆粒したマスト細胞の増加によって特徴づけられ12)、マスト細胞脱顆粒抑制剤投与(cromolyn13)、ketotifen14))により線維化が減弱することを報告した。更に、Tskマウスとマスト細胞欠損マウスを交配すると加齢と共に有意に線維化が抑制され、マスト細胞が線維化進行に必須であることが明らかとなった15)。また、マスト細胞の分化・増殖・遊走因子であるstem cell factor (SCF)、TGF-β1とIL-15発現はマスト細胞数と相関し、更に興味深いことに、正常マウスの皮膚を移植されたTskマウスではマスト細胞およびSCF、TGF-β1とIL-15の増加を認めたが、Tskマウスの皮膚を移植された正常マウスでは増加を認めなかった。これらの結果から、Tskマウスの局所へのマスト細胞の遊走は局所環境で産生されるSCF、TGF-β1とIL-15によることが明らかとなった16)。しかし、一方では、ブレオマイシン誘導モデルにおいて、組織・生化学的に強皮症に類似した真皮の線維化の進行は、脱顆粒したマスト細胞数と相関するが17)、マスト細胞欠損マウスでの検討により、真皮性線維化に関与するものの必須ではないと結論付けられている18)。また、以前より慢性移植片対宿主病(Graft versus host disease;GVHD)患者の一部に強皮症類似の皮膚硬化がみられることがあり、マウスにおいても同種異系の脾細胞を移植することによって同様の現象が見られる19)。このGVHDモデルマウスでは、誘導2週間以内に真皮線維化、皮膚脂肪や付属器の萎縮と単核細胞の浸潤を認め、ヒト慢性GVHDと強皮症の組織学的類似点を持つ19, 20)。このモデルマウスでは、皮膚線維化の直前に著明なマスト細胞の脱顆粒を認め20)、マスト細胞安定化剤であるnedocromilが皮膚線維化を減弱させ、一方マスト細胞活性化剤であるcompound 48/80は軽度慢性GVHDの皮膚線維化を増強した21)。このように強皮症モデルマウスにおける皮膚線維化へのマスト細胞の関与は多数報告されており、線維化病態への深い関与が示唆されている。